株式会社荏原製作所 導入事例
SAP導入の命運をわける
「データ移行」の完遂。
リソースプールによる盤石の体制


Summary
荏原製作所様が推進する大規模なSAP導入プロジェクト。国内外のグループ会社への展開が進むなか、プロジェクトは膨大なデータ量、タイトなスケジュール、コストという課題に直面していました。
当時、相談をもちかけたのはテスト会社として認識されていたSHIFTですが、対話を重ねるなかで、プロジェクトの成功を握るタスクのひとつ、「データ移行」のパートナーへと変化していきます。
本記事では、単なる業務委託の枠を超え、重要かつ難易度の高いデータ移行を成功に導くとともに、人材育成の好循環も生み出した取り組みについてご紹介します。
「テストのSHIFT」から「移行のSHIFT」へ
課題解決の糸口となった意外な提案
今回のプロジェクトが発足した当時の状況と、課題について教えてください。

リソース不足が顕在化したわけですね。外部ベンダーへの委託は検討されましたか?
もちろん、導入ベンダーに一任することも検討しましたが、それではコストが膨らんでしまいます。移行責任者として、いかに効率的に進めながらコストを抑えるかに悩んでいました。ただ、コスト以上に深刻だったのが現場の負荷です。社員だけでは現場が疲弊してしまうという強い危機感がありました。このままでは現場が潰れ、プロジェクト自体が頓挫しかねない。そうした状況のなかで、既存の枠組みにとらわれない新たな選択肢を模索しはじめたのがきっかけでした。
テスト自動化ツールの提案中に
こぼれた「移行」への本音
当初はテスト自動化の検討からはじまったとのことですが、
どのようなきっかけで「データ移行」に焦点が当たったのでしょうか?
お付き合いがはじまったきっかけは、プロジェクトのパートナー企業様を通じて、テスト工程の効率化に関するご相談をいただいたことだったと記憶しています。

そうですね。当時、プロジェクト全体として「いかにコストを最適化するか」という共通課題があったと理解しております。その解決策のひとつとして、テスト自動化の話がもちあがっており、我々SHIFTはテスト自動化ツール「Tricentis(トライセンティス)」の知見を活かした提案で参画しました。
「テストツールを導入してテスト工数を削減する」という議論をしばらくつづけていたのですが、実は私の頭のなかはテストのことよりも、目前に迫ったデータ移行の悩みでいっぱいだったんです(笑)。会話の端々で、無意識に「ちなみに、移行業務などは対応されていないですか?」とこぼしたことを覚えています。
はい(笑)。森実様から「自動化も重要だが、いま一番困っているのは『移行』なんだ」という切実な本音を伺い、そこから一気に支援の形が具体化していきました。
「テスト専門」の先入観を覆した
移行業務そのものへの伴走支援
移行の会社という認識がないなかで、
あえてSHIFTへ移行業務を打診された決め手は何だったのでしょうか?

「実はこういうことで困っている」と話したところ、親身になって相談に乗っていただき、実践的な提案をもらったことが決め手でした。提示してくれた体制であれば、コストを予算内に抑えつつ、リソース不足も解消できる。「一度やってみましょうか」とスタートしたのが経緯です。最初はテスト専門の会社だと思っており、移行という高度な業務知識が求められる領域まで担っていただけるとは考えていませんでした。
専門性の高い移行業務において、未経験者でも迷わず確実に
作業を遂行できるようにした工夫を教えてください。
本稼働目前にSHIFTさんに参画いただいた際、改めて浮き彫りになったのが移行テンプレートの課題でした。これまでの資料は、無意識のうちに、SAP特有の仕様や画面項目などの特性に精通していることを前提としたつくりになっていたのです。そのため、専門的な知見をもたないメンバーがそのまま活用するには、非常に難易度が高い内容でした。

弊社のチームも、知見者と若手を組み合わせた混成体制でした。そこで徹底したのは、専門的なナレッジの標準化です。ヒューマンエラーのリスクを排除し、確実にタスクを完遂するために、導入ベンダー様からのKT(知識移転)をただ受けるのだけではなく不明点をすべて洗い出すこと、SAP未経験者でも迷わず操作できる独自の補足資料とチェックリストを整備することを推進しました。
このときに作成いただいたドキュメントが、本当に素晴らしかった。DataSpider(データスパイダー)やJP1といったツール特有の操作スキルを前提とせず、誰にでもわかる言葉で整理されていました。おかげで、手順書通りに進めれば確実にデータを投入できる仕組みができあがり、プロジェクトの再現性が飛躍的に高まりました。正直、自社の社員教育用にも欲しいと思うほどの完成度でしたね(笑)。
個人のスキルに依存せず、プロジェクトを重ねるごとに
品質や効率が向上していく仕組みは、どのようにして実現されたのでしょうか?
はじめてツールに触れるメンバーもいましたが、手順の事前確認と補足資料などの整備、そして厳格なダブルチェック体制を敷くことで、スキルに依存しない品質の安定化を実現しました。
課題発生時の解決方法を詳細に記録してくれた点は、非常に大きな成果でした。これについては想定以上でしたね。前回の経験と整備されたマニュアルが次工程に確実に活かされるようになり、効率が劇的に向上しました。
24時間体制を支える「移行センター」の
機動力と、チームマネジメント

移行作業は一度はじまれば止めることはできません。24時間体制での完遂は大きな助けになりました。移行センターのなかで人員をローテーションしながら柔軟に対応していただいた。これを自社社員だけで担おうとすれば現場は間違いなく疲弊していましたし、プロジェクトの遅延も免れなかったと思います。
万全のシフト体制を構築すると同時に、特に心がけていたのは、リモート環境下における密なコミュニケーションです。メンバー全員と少なくとも1日1回は対話の機会を設け、状況を丁寧に確認してきました。わずかな変化も見逃さず、「少し元気がない」と感じた際には個別にフォローを実施。こうしたメンタル面も含めたコンディション管理こそが、安定したプロジェクト運営を支える重要な要素だと考えています。
本番移行フェーズにおける不測の事態に対し、
具体的にどのような対応で危機を乗り越えられたのでしょうか?
忘れられないのは、あるクリティカルな移行局面での出来事です。それまでのリハーサルでは重大な不具合はそれほど発生していなかったのですが、本番に限って、これまで一度も出たことのない不具合が連発したのです。「リハでは出なかったのに、なぜいま?」とメンバーも騒然としました。
あのときのスピード感は凄まじかったですね。
その極限状態での迅速なリカバリーを支えた要因は何だったとお考えですか?

「補足資料」と「標準化された手順」があったからだと思います。もし手探りでやっていたら何時間もかかっていたでしょう。事前に手順が明確化され、全員が動きを理解していたからこそ、極限のスピードで正確なオペレーションができました。「できないといわずにやり切る」姿勢は、この標準化という土台があってこその成果です。
その姿勢があったからこそ、我々も安心して任せることができました。他社さんでは断られるような領域でも逃げずに取り組み、結果を出してくれた。その現場力こそが信頼の証です。
プロジェクトを通じた人材育成と今後の展望
「リソースプール」戦略が、若手エンジニアの育成や
プロジェクトの成長にどのような影響を与えているのでしょうか?

当初はSAP未経験の若手も多かったのですが、森実様のご理解のもと、実戦を通じて育成するリソースプールのような仕組みができあがっています。
SAPのスキルを身につけるには、座学よりも実戦が効果的です。特にデータ移行とテストはシステムのエラーや障害に一番多く触れる工程。ここで揉まれることで、SAPの仕組みやデータの流れが本質的に理解できるようになります。
おかげさまで、このプロジェクトで育ったエンジニアが他の拠点でも即戦力として活躍しています。荏原製作所様のなかで人材が育ち、それがまたグループ全体のDX推進に還元されるという、素晴らしいエコシステムが確立されています。
現在進行中のプロジェクトでは、どのような成果が生まれていますか?
現在進行中の拠点においても、データ移行においてSHIFTチーム起因の障害や遅延は「0件」を達成しています。

それは素晴らしいですね。最初は不安もありましたが、「SHIFTさんに任せておけば問題ない」という確信をもてるようになりました。移行のアプローチ自体がひとつのテンプレートとして完成されており、どの会社に展開しても通用するレベルになっています。かつては体制図の片隅に名前があるだけだった移行チームですが、いまでは体制図にSHIFTのロゴが、ベンダーやコンサルと並んで大きく掲載されています。社内でも「あの赤いのは何だ?」と注目される存在になりました。
荏原製作所グループ全体のDXを支える
不可欠な存在へ
今後の展望についてお聞かせください。
森実様が早いタイミングから「SHIFTがあるよ」と国内展開先カンパニーにご紹介くださったおかげで、いまの体制があります。今後も年末や夏の移行を控えていますので、一歩先を行くご支援をつづけてまいります。
最も手応えを感じているのは、当初はSAP未経験だった若手メンバーが、実戦を通じてデータ移行のスペシャリストとして独り立ちしていることです。ここで培った標準化のノウハウとやり切る力を武器に、他社プロジェクトでも即戦力として活躍している。この人材の好循環こそが、リソースプール戦略の成果だと考えています。今後も、荏原製作所グループ様の発展を支える人財の供給源でありつづけたいと思います。
移行のアプローチ自体が一つのテンプレートとして完成されており、どの会社に展開しても通用するレベルです。ソフトウェア開発を取り巻く環境は激変していますが、この実践的な知見を武器に、ともに未来を切り拓いていきましょう。
ありがとうございます。当初は操作方法を聞くところからはじまったメンバーも、いまではリカバリー方法の提案まで、一歩先回りした対応ができるようになってきました。これからも「SHIFTなら安心して任せられる」といっていただけるよう、全力を尽くしてまいります。

※掲載内容は2026年2月取材時のものです。

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