AI TRiSMとは?対策できるAIリスク、導入時のポイントを解説

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AI TRiSMとは?対策できるAIリスク、導入時のポイントを解説

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

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Introduction

近年、AI技術は身近になり、なくてはならない存在になりました。しかし、AIによる判断ミスが起きることも十分に考えられ、倫理面やセキュリティ面の問題も存在します。そこで必要とされているのが、AI TRiSMです。

この記事では、AI TRiSMの定義や4つの要素、導入時のポイントや活用事例などについて解説します。

目次

AI TRiSMとは?

AI TRiSMとは

AI TRiSMとは、米国の調査会社Gartner社が提唱したフレームワークです。どのようなフレームワークなのか、その定義や注目されている理由について解説します。

安全にAIを提供するためのフレームワークのこと

AI TRiSMは「エーアイトリズム」と読み、「Artificial Intelligence(AI)Trust, Risk and Security Management」のことです。米国の調査会社Gartner社が提唱したフレームワークで、AI(人工知能)の開発や活用の際に、セキュリティ、プライバシー、倫理面などの懸念事項に焦点を当てるものです。

AI TRiSM

AI TRiSMは、AIモデルのガバナンス、信頼性 (トラスト)、公平性、確実性、堅牢性、有効性、データ保護を確保するフレームワークです。

AIとは「Artificial Intelligence」、つまり人工知能のことです。人間の脳の一部を模倣することで、人間のように認知、学習、判断できる機能を有しています。

近年では、業界を問わずAI技術が浸透し、さまざまな場面で実用化が進んでいます。身近な例は、自動車の自動運転技術、エアコンの温度や風向設定、お掃除ロボット、診断アプリ、チャットボットなどです。たとえば、自動運転技術は車間距離の調整、標識や道路、人間、障害物といった自動認識などをAIが実現しています。このように、人間が物事を認識して脳で判断するという動作を、AIが実現しはじめているのです。

しかし、AIの実用化が進むなかで、新たな問題も生まれはじめています。それは、AI技術の進歩により生じる信頼性や公平性、有効性、プライバシーやセキュリティなどの問題です。AIによる判断は必ずしも正しいとは限らず、信頼性や公平性、有効性に疑問が残る場合もあるでしょう。また、データ保護やプライバシーの侵害の観点から問題が生じる場合や、データの流出などが起こるセキュリティの問題なども、指摘されています。

そんななか、米国の調査会社であるGartner社は、2023年の戦略的テクノロジーのトップトレンドとして、以下の3つのテーマをとりあげました。

・最適化(Optimize)
・拡張(Scale)
・開拓(Pioneer)

AI TRiSMは、上記のうち「最適化」のカテゴリに分類されています。最適化とは、企業が業務オペレーションやレジリエンスなどを、テクノロジーを活用して向上させていくことを意味しています。その具体的な取り組みのひとつが、AI TRiSMです。

AI TRiSMは、以下の3つの言葉から成り立っています。

・Trust:信頼性
・Risk:リスク
・Security Management:セキュリティ・マネジメント

上記のような懸念事項を考慮した枠組みであるAI TRiSMを活用することで、AIの信頼性を向上させ、より多くの価値を実現することが可能です。

AI TRiSMが注目されている理由

AIは、いまやなくてはならない技術であり、AIを活用したテキスト、音声、画像、動画の生成などが実用化されています。しかし、新しい技術が発展する際には、新しい問題が起こります。

たとえば、AIが判断した結果が正しいとは限らず、AIに任せた結果、重大な問題が生じることもあるでしょう。また、製作した画像や音楽などが、機械学習の元データとして勝手に使われることは、著作権の問題につながります。個人のプライバシーに関するデータが収集されることで、プライバシーの侵害が起こる、個人情報が流布することでセキュリティの問題につながるなども考えられます。

このように、AIが急速な進化を遂げる一方で、リスク管理の必要性が高まっているのです。AIは非常に有用な技術ではあるものの、過信は禁物です。またAIにより、倫理的な問題や、セキュリティの問題が発生することもわかっています。

そのため、AIを活用する過程で生じるさまざまな問題を正しく認識し、ルール化することが求められはじめました。AI TRiSMは、そのために有効なフレームワークです。AIは今後も進化をつづけ、さまざまな新しい成果を生み出すでしょう。しかし、その過程で生じる問題を解決していく必要もあります。そのために必要とされているのが、AI TRiSMといえます。

AI TRiSMの4つの要素

AI TRiSMは、大きくわけると以下の4つの要素から成り立っています。ここでは、これらの重要な4つの要素についてご説明します。

説明可能性

AIが出した結論や予測が、どのようなプロセスで、どのような根拠をもって導き出されたのかを明確に理解することを指しています。AIが出したアウトプットに対し、ユーザが自身で説明できるレベルで根拠を理解しておく必要があります。それができれば、AIの信頼性や公平性、有効性が高まることで、アウトプットが信頼できるものとなるのです。

ModelOps

AIモデルの開発、運用のライフサイクルに関する概念です。ModelOpsの概念を取り入れることで、開発、運用のパフォーマンスの向上を目指します。

AIが開発、運用されるライフサイクルは、開発、デプロイメント、モニタリング、メンテナンスという流れから成り立っています。このライフサイクルを適切に繰り返すことで開発が行われ、運用フェーズで判明した問題点などをフィードバックして、次の開発に活かされます。

しかし、このライフサイクルが適切に運用されないと、AI運用がうまくいきません。そこで、ModelOpsの概念により、AIのライフサイクルを適切に進められるような管理手法を定めます。これにより、AIシステムのビジネス価値が最大化されていきます。

そうすることで、開発、運用の進捗ペースを最大限に高めながら質の高い結果を得られるようになります。

AIセキュリティ

AIセキュリティとは、AIシステムそのものと、AIで扱うデータを外部からのサイバー攻撃から守るための対策です。

AIシステムが、不正アクセスなどにより乗っとられることはもちろん危険ですが、AI開発に必要な膨大なデータを守る必要もあります。AI開発のために収集し、分類されたデータを盗まれれば、開発者にとって大きな痛手です。また、データ内には機密情報や個人情報が含まれている場合もあり、セキュリティ対策が必要とされています。

AI開発を行う際には、さまざまな外部からの攻撃や不正利用などから、適切に保護する必要があります。

プライバシー

AI開発を行う際には、膨大な量のデータを扱うことが多く、データのなかには個人情報が含まれることもあります。このような個人情報の扱いを慎重に行わないと、個人のプライバシーを侵害する恐れがあります。

たとえば、人物の写真を大量にデータとしてインプットすることで、AI技術を用いて映像作品を生成するシステムを開発する場合です。このデータのなかに実在する人物の写真が含まれていると、世のなかに個人の写真が使われた作品が、広く出回ってしまうことになるでしょう。

また、ネット上のデータを無作為に収集した場合、データの制作者の意図せぬところで使用されるため、著作権の侵害が発生する恐れもあります。

このように、AI開発には個人のプライバシーを侵害するリスクが生じるため、プライバシー保護の観点から個人情報を適切にとり扱う必要があります。

AI TRiSMで管理するべきリスク項目

AI TRiSMで管理するべきリスク項目

AI TRiSMで管理するべきリスク項目には、具体的にどのようなものがあるのかをまとめました。

セキュリティ侵害のリスク

AI開発では、膨大な量のデータをシステムに学習させることもあります。その際には、データを保護するためのセキュリティ対策が必要です。

AI開発のために、目的にあったデータを収集し、適切なタグづけなどを行って保管します。しかし、このデータが盗まれれば、用意したデータが競合他社に流用されてしまう可能性もあるでしょう。また、AIシステムに侵入され、AIが出力したデータが改ざんされるリスクなどもあります。

そのため、セキュリティ対策を徹底し、データやシステムを安全に利用できるようにしなければなりません。

プライバシー侵害のリスク

AI開発においては、膨大な量のデータを収集、分析し、そのデータを元に判断してアウトプットを行います。

データを収集する際には、そのデータの制作者や提供者の承諾を得ているかを確認しなければなりません。承諾を得ずに無断使用してしまった場合、著作権の侵害やプライバシーの侵害などが発生します。

このように、プライバシー侵害のリスクが発生する可能性があるため、データのとり扱いには十分な注意が必要です。

社会的混乱のリスク

AIの登場により、社会的混乱を招く可能性もあります。

たとえば、いままで人が行ってきた仕事をAI搭載のロボットや機械がとってかわることで、人が仕事を失います。その結果、人の仕事がなくなってしまうのではないかなど、社会不安が広がる可能性も考えられるでしょう。

また、AIが活躍する場が増えることで、不具合が生じたときに影響範囲が広がります。AIが判断ミスを起こさないとは限らず、重大なミスが発生すれば、社会に混乱を招くかもしれません。

AI TRiSMを導入する際のポイント

AI TRiSMは、これからAIを導入するうえで、必要な考え方であることがわかっていただけたでしょう。しかし、AI TRiSMを導入する際には、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

ここでは、AI TRiSM導入の際の重要なポイントについて解説します。

目的を明確化する

AI TRiSMを導入する際には、何のために導入するのか、その目的を明確にする必要があります。

極端にいえば、AIを活用するなかで問題が発生していないならば、導入する必要はないかもしれません。導入するなら、何のために導入するのか、何を達成したいのか、どのような問題を解決したいのかなどを明確化する必要があります。

専門部署を設置する

AI TRiSMを推進する専門部署を設置するのが望ましいです。

AI TRiSMを扱える専門スキルをもつ人材を集めるため、セキュリティ、データサイエンスなどの分野の専門知識をもつ、IT人材を募集する必要もあるでしょう。また、IT分野の知識や技術だけでなく、法務、コンプライアンスなどの分野に強い人材も必要です。もちろん、AI TRiSMに関する知識や経験も必要で、全社的にAI TRiSMの取り組みを進められるマネジメントスキルなども求められます。

リスクを洗い出す

現状のAI開発や導入を行っている状況で、どのようなリスクが存在するのか、今後発生しうるリスクは何かなどのリスクの洗い出しが必要です。

たとえば、会員サイトやECサイトなど、個人情報を扱うシステムを運営している場合には、個人情報に関するセキュリティのリスクについて、細かく分析を行う必要があるでしょう。リスクを明らかにすることで、どのような対応が必要なのかが明確になります。

AIの思考プロセスを十分に理解する

AI TRiSMの4要素のひとつである「説明可能性」を確保するために、AIの思考プロセスを十分に理解する必要があります。AIの思考や判断の根拠を明確に説明できるようにしておくことで、正しい運用を行えるでしょう。

データを適切に管理する

AIの精度を向上させるためには、AIが扱う膨大な量のデータを適切に管理する必要があります。そのためには、データを適切に収集してタグづけを行う、定期的に更新するなどの作業が必要です。

また、データの漏えいや改ざんなどを防ぐために、暗号化、アクセス制御、ネットワーク監視などのセキュリティ対策を行うことも重要です。

リアルタイムで監視・メンテナンスを行う

運用中のAIモデルをリアルタイムに監視し、パフォーマンスやセキュリティの問題に目を光らせておく必要があります。リアルタイム監視を行うことで、問題を早期発見でき、被害が拡大する前に迅速に対策できます。

普段からログ監視、エラーの検知などのシステムメンテナンスを行う必要もあるでしょう。

AIシステムの品質保証ー基本と進め方ー

本資料は、AIシステムの品質保証をテーマに、 SHIFTで実施しているノウハウを紹介しながら具体的な手法や進め方などを説明しています。
AIシステムの安全性と信頼性を確保することで、ユーザーに安心感を提供し、その結果、より広範囲での利用を促進いただけます。品質が確保されたAIシステムは、予測精度が高まり、ビジネスの意思決定や社会問題の解決に大きく貢献します。ぜひご覧ください。

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まとめ

この記事では、AI TRiSMの定義や4つの要素、導入時のポイントや活用事例などについて解説しました。AIを活用していくためには、信頼性や倫理面、セキュリティ面などの問題をクリアしていく必要があります。そのために、AI TRiSMの導入が求められているのです。

SHIFTでは、AIシステムに特化した品質保証フレームワークを導入することで、安全性の高いシステム開発を支援します。質の高いAI開発を行いたい、AI製品を導入したいなどの場合には、お気軽にご相談ください。

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