システム開発の課題とは?よくある原因と対策を工程別にわかりやすく解説

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システム開発の課題とは?よくある原因と対策を工程別にわかりやすく解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

システム開発が思うように進まない、納期遅延、品質問題、コスト超過といったトラブルは、多くの企業で繰り返し発生しています。しかしその原因は、単なる技術力不足ではありません。要件定義の曖昧さ、ゴールの共有不足、業務整理の不徹底、属人化した開発体制など、「人・業務・技術・組織」が複雑に絡み合う構造的な課題が背景にあります。

この記事では、システム開発でよくある主要課題を整理し、それぞれの原因・兆候・具体的な解決策をわかりやすく解説します。さらに、どのように優先順位をつけ、再発防止の仕組みを構築すべきかまで踏み込みます。

目次

なぜシステム開発では課題が頻発するのか

なぜシステム開発では課題が頻発するのか

システム開発では、なぜこれほどまでに課題が発生するのでしょうか。その最大の理由は、システム開発が「技術」だけの問題ではないからです。

実際には、
・人(関係者のスキル・経験・認識)
・業務(現場の運用・慣習・暗黙知)
・技術(設計・開発・テスト)
・組織(意思決定・責任範囲・文化)
といった複数の要素が絡み合っています。

そのため、「担当者の能力不足」「要件定義が甘い」など単一の原因で片づけることはできません。たとえば要件定義が曖昧だった背景には、決裁者不在や部門間対立、業務整理不足など、複数の要因が潜んでいるケースが多くあります。

また、システム開発は工程が分かれているため、上流工程の小さな問題が下流工程で大きなトラブルとして顕在化します。経営層の立場から見ると「なぜ急に問題が噴出したのか」と感じられますが、実際には水面下で課題が蓄積していたという構造です。

したがって重要なのは、「どこで何が起きているか」を工程横断で把握する視点です。個別最適ではなく、全体最適の視点で課題を整理することが、再発防止の第一歩となります。

システム開発、要件定義についてはこちらもご覧ください。
>>システム開発とは?工程や手法、依頼時のポイントまでわかりやすく解説のページへ
>>要件定義とは?作成手順や前後の流れをわかりやすく解説!のページへ

システム開発の課題は連鎖する

システム開発の課題は単発では終わらず、多くの場合で連鎖します。典型的な例は以下の流れです。

要件が曖昧

設計のやり直しが発生

手戻りが増加

納期遅延が発生

テスト期間が削られる

品質が低下

障害対応で追加コスト発生

このように、最初は小さな曖昧さでも、後工程では大きな損失になります。

特に経営層として押さえておきたいのは、「問題が起きてからではもう遅い」という点です。障害や納期遅延は「結果」であり、その前段階で兆候が必ず出ています。

たとえば、
・会議のたびに前提が変わる
・仕様変更が頻発する
・議事録が残っていない
・レビューが形骸化している

これらはすべて将来のトラブルの予兆です。

システム開発を成功させるためには、「発生した問題」ではなく「問題を起こす兆候」に目を向けることが不可欠なのです。

システム開発でよくある主要課題と解決するための対応策

ここからは、システム開発で頻発する主要課題を整理し、それぞれ「原因→起きやすい場面→兆候」の順で解説、そのうえで解決策を提示します。

なお、前章で述べたとおり、課題は単独では存在しません。多くは相互に関連し、根本には「合意不足」「標準化不足」「可視化不足」が潜んでいます。

自社にどのような課題があるのかを検証する際に役立ててください。

要件定義が不明確なまま(合意が不足している)

■原因
・目的や優先順位が曖昧
・現場業務の理解不足
・最終決裁者が不在
・部門間の意見対立

■起きやすい場面
・新規事業の立ち上げ時
・業務改革と同時にシステム刷新を行う場合
・複数部門が関与する横断プロジェクト
・経営層の期待が抽象的なまま開始した案件

■兆候
・要件が増えつづける
・会議のたびに前提が変わる
・完成の定義が説明できない
・受入条件が言語化されていない

「要件定義が不明確」という課題の解決方法

・プロジェクト憲章で目的と優先順位を明文化
・最終意思決定者の明確化
・受入基準の文章化
・変更管理ルールの事前合意

目的(KPI)やゴールが共有されていない

■原因
・「つくること」が目的化
・部門ごとに成功条件が異なる
・経営指標と連動していない

■起きやすい場面
・トップダウンで急遽始まったプロジェクト
・IT部門主導で進められる案件
・現場を十分に巻き込まずに企画された案件

■兆候
・成果指標が定義されていない
・リリース後の評価方法が不明
・現場の温度感が低い

「ゴールの共有不足」という課題の解決方法

・KPIを数値で設定
・成功条件を部門横断で合意
・定期的な成果確認会の実施

開発プロセスの標準化がなく属人化が起こっている

■原因
・成果物テンプレート不足
・レビュー基準が曖昧
・変更管理フローが未整備

■起きやすい場面
・スタートアップや急成長企業
・小規模チームが拡大した場合
・ベテラン依存が強い組織

■兆候
・担当者ごとに品質差が大きい
・資料形式が統一されていない
・引き継ぎが困難

「開発プロセスの標準化不足と属人化」という課題の解決方法

・成果物テンプレート整備
・レビュー観点の明確化
・変更管理フロー標準化
・ナレッジ共有の仕組み構築

業務プロセスの見直しが不足している

■原因
・既存業務をそのままシステム化
・業務のムダが未整理のままである

■起きやすい場面
・レガシーシステムのリプレイス
・紙やExcel中心業務のデジタル化
・短期間での刷新プロジェクト

■兆候
・新システムでも作業量が減らない
・手作業や二重入力が残る

「業務プロセスの見直し不足」という課題の解決方法

・業務フローの可視化
・不要業務の削減
・業務改革とセットで推進

コミュニケーション不足・認識齟齬

■原因
・業務用語と技術用語の違い
・窓口が複数存在し一元化されていない
・議事録が未整備のままである

■起きやすい場面
・発注側と開発側が別会社の場合
・リモート中心のプロジェクト
・関係者が多い大規模案件
・多くの部門や外部組織が関連しているプロジェクト

■兆候
・「聞いていない」という発言が増える
・決定事項が共有されない
・同じ説明を何度も繰り返す

「コミュニケーション不足・認識齟齬」という課題の解決方法

・窓口の一本化
・議事録の徹底
・用語集作成
・定例報告の仕組み化

スケジュール管理が難航している

■原因
・WBSが粗い
・タスク間の依存関係が未整理のまま
・バッファが不足している(管理されていない)

■起きやすい場面
・短納期案件
・経験の浅いPMが担当
・途中から仕様変更が増えた案件

■兆候
・遅延が常態化している
・リスケジュールが頻発している
・特定の工程にしわ寄せが集中している

▽あわせて読みたい▽
>>プロジェクト遅延の原因とリカバリ方法は?初動対応や再発防止の対策を解説のページへ

「スケジュール管理の難航」という課題の解決方法

・タスクの細分化
・依存関係の明確化
・変更時の再見積りを徹底
・適切なバッファ設定と管理

品質保証が弱い(テストが後ろ倒しになる)

■原因
・テスト計画策定が遅い
・受入基準が不明確
・設計レビューが不足している

■起きやすい場面
・納期優先文化が強い企業
・人員不足のプロジェクト
・上流工程の遅延が発生した案件

■兆候
・下流工程で重大欠陥が発覚する
・障害対応が頻発
・リリース延期

▽あわせて読みたい▽
>>品質保証(QA)とは?品質管理との違いや具体的な業務内容について解説のページへ

「品質保証不足」という課題の解決方法

・早期にテスト計画を策定する
・テスト観点を標準化する
・設計レビューの強化

セキュリティリスクを抱えている

■原因
・権限設計が後回し
・ログ設計の未整備
・責任分担が曖昧
・アップデートや監視など、運用開始後のタスクが整理されていない

■起きやすい場面
・クラウド移行プロジェクト
・急速なサービス拡張時
・外部委託が多い案件

■兆候
・権限過多が起きている
・監査証跡が不足している
・脆弱性対応が後手に回っている
・運用開始後のアップデートや監視対応が場当たり的になっている

「セキュリティリスク」という課題の解決方法

・最小権限に押さえることを徹底する
・ログ収集と分析の徹底
・責任分担の明文化
・セキュリティ教育の徹底

人材確保が難航しチームがスキル不足に陥っている

■原因
・採用市場の影響
・育成時間が不足している
・新技術に対応するための準備不足

■起きやすい場面
・DX推進初期段階
・新技術導入時
・内製化を急いだ場合

■兆候
・外部依存の増加
・レビュー形骸化
・品質のばらつき

「人材確保の難航とチームのスキル不足」という課題の解決方法

・育成計画の策定
・検証環境の整備
・外部企業の活用

外部連携や既存システムなどの依存関係が複雑

■原因
・API連携が多い
・データ同期設計不足
・影響範囲を把握していない

■起きやすい場面
・基幹システム連携案件
・複数ベンダー体制
・段階的に刷新を進めているプロジェクト

■兆候
・システム変更時の影響範囲が明確でない
・改修に時間がかかる
・障害時の原因特定が困難

「外部・既存システムとの依存関係の複雑さ」という課題の解決方法

・依存関係の可視化
・インターフェース仕様の文書化

コスト管理ができていない

■原因
・見積前提が曖昧である
・スコープ追加が頻発している
・コスト管理における判断基準がない

■起きやすい場面
・要件が固まらないまま契約している
・アジャイル導入初期
・追加要望が多い案件

■兆候
・追加費用が頻発する
・予算超過が起きる
・ROIが説明できない

「コスト管理不足」という課題の解決方法

・前提条件の明文化
・変更の都度見積りを取る
・優先順位による取捨選択を行う

システム開発における課題解決の優先順位の付け方

システム開発における課題解決の優先順位の付け方

前章では、システム開発における主要課題を整理しました。しかし現実のプロジェクトでは、複数の問題が同時に存在します。

「すべて改善したい」という思いは理解できますが、同時に手をつけると現場が混乱します。重要なのは、優先順位をつけ、効果が高いところから着手することです。

ここでは、課題解決の優先順位をつける際に押さえておくべき3つのステップを解説します。

STEP1:現状診断

最初に行うべきは、「感覚」で判断しないように、「事実」を把握することです。まず整理すべきなのは、以下の3点です。

・いま困っている現象は何か
・それは費用・納期・品質のどれに影響しているか
・どの工程で手戻りが発生しているか

たとえば、
・仕様変更が多い→要件定義工程
・不具合が多い→設計・テスト工程
・納期遅延が常態化→計画工程

など、問題がどこで起きているかを把握することは非常に重要です。このように工程別に整理すると、問題の発生源が見えてきます。

さらに、簡易的でもよいので指標を定めることも重要です。

・変更件数
・手戻り回数
・障害件数
・再テスト回数
・見積との差異
などと数値化し現状を検証することで、「なんとなく不安がある」という状態のままにせず、「どこがどれくらい弱いのか」と議論を進めることができます。

そして、「誰の責任か」を問うことではなく、「構造としてどこに無理があるか」を見極めることが重要です。どこにどのような問題が潜んでいるのかを把握できなければ、問題を解決することはできないでしょう。

STEP2:影響と実行難易度を判断し、パフォーマンスが良い施策を選ぶ

次に行うのは、施策の選定です。すべてを一度に変える必要はありません。効果が高く、実行しやすいものから着手することが重要です。

たとえば、次のような施策は比較的取り組みやすく、効果も大きい傾向があります。

・要件の合意ルール整備
・テスト観点の標準化
・議事録の徹底
・変更管理フローの明文化

これらは大規模な組織改革を伴わずに実行できます。

一方で、
・全面的な業務改革
・システム基盤の全面刷新
・組織再編
などは影響が大きく難易度も高い施策です。

そこで有効なのが、「影響度×実行難易度」のマトリクスで整理する方法です。

・影響大・難易度低→最優先で対応する
・影響大・難易度高→計画的に実施する
・影響小・難易度低→余力があれば対応する
・影響小・難易度高→記録はしておき後回し

この視点で整理すると、感情ではなく合理的に優先順位を決めることができます。

STEP3:再発防止の仕組み化

最後に重要なのは、「一度解決して終わり」にしないことです。課題の多くは、人の頑張りで一時的に改善されます。しかし仕組みに落とし込まなければ、担当者が変わると元に戻ってしまうでしょう。

再発防止のためには、次の3つが有効です。

①テンプレート・チェックリスト化
・要件定義書テンプレート
・設計レビュー観点リスト
・受入基準チェックリスト

これにより、品質のばらつきを抑えられます。ただし、テンプレートやチェックリストを増やすだけでは作業が増えてしまうだけです。ただ増やすだけではなく、実際に使われているか、効果が得られているかを定期的に確認して改善を行い、場合によっては廃止するなど、継続的に見直す必要があります。

②自動化
・自動テスト
・静的解析
・自動デプロイ

人手依存を減らすことで、ミスを構造的に防げます。一方で、自動化が目的になってしまうことは問題です。すべてを自動化する必要はなく、効果が大きい場合に自動化するのが望ましいでしょう。

③ナレッジ共有
・設計方針の明文化
・運用手順書の整備
・障害事例の共有

経験を組織の資産に変えることが重要です。経営層の役割は、「仕組みを維持する文化」を支えることです。短期的なコスト削減のために品質活動を止めてしまうと、長期的には大きな損失になります。

まとめ

システム開発の課題は、単一要因ではなく「人・業務・技術・組織」が複雑に絡み合う構造問題です。

特に重要なのは次の3点です。
1.課題は連鎖する
2.兆候は必ず事前に現れる
3.解決は「仕組み化」まで行って初めて完了する

要件の曖昧さ、ゴールの不一致、標準化不足、コミュニケーション不全など、これらの問題はどの企業でも起こり得ます。

しかし、
・現状を可視化し
・優先順位をつけ
・再発防止を仕組みに落とし込む
この3ステップを実行すれば、改善は十分可能です。

システム開発はコストではなく、経営基盤を強化する投資です。経営層が構造を理解し、正しく関与することで、成功確率を大きく高められるでしょう。

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永井 敏隆

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

サービスサイト:https://service.shiftinc.jp/
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