Introduction
DX推進や業務効率化、新規サービスの立ち上げなどを背景に、システム開発を外部へ発注する企業が増えています。しかし「何から準備すればよいのかわからない」「開発会社の選び方に不安がある」「契約時に注意すべきポイントを知りたい」といった悩みを抱える経営者や担当者も少なくありません。
この記事では、システム開発を発注する前に知っておきたい基本知識から、発注までの具体的な流れ、開発工程の概要、発注先選定のポイントまでをわかりやすく解説します。
目次
システム開発を発注する前に知っておきたい基本
ここでは、システム開発を発注する際に知っておきたい基本事項として、システム開発を外注する主なケース、発注者の役割、契約形態の違いについて解説します。
システム開発を外注する主なケース
企業がシステム開発を検討する背景には、業務効率化や情報活用、競争力強化、売上拡大など、さまざまな目的があります。たとえば、手作業が多い業務を自動化したい、部門ごとに分散しているデータを一元管理したい、新規サービスを立ち上げたいといった場合には、新しいシステムの導入や既存システムの刷新が有効な選択肢となります。
また、長年利用してきた既存システムの老朽化も、システム開発を検討する代表的な理由です。古いシステムを使い続けると、保守コストの増加や障害リスクの高まり、セキュリティ上の問題につながることがあります。業務効率や安全性を維持するために、既存システムの改修や新しいシステムへの移行を検討する企業も少なくありません。
このように、事業上の課題を解決するためにシステム開発が必要となったものの、社内の人材や技術、リソースだけでは対応がむずかしい場合に、外注が選択肢となります。具体的には、社内にシステム開発の専門知識をもつ人材がいない場合や、クラウド活用、セキュリティ対策、AI導入などに必要な技術やノウハウが不足している場合です。
加えて、開発担当者を新たに採用・育成する時間がない、通常業務と並行して開発を進める余裕がない、希望する納期までに社内で開発体制を整えられない場合も、外注を検討する代表的なケースです。外部の開発会社を活用することで、専門的な知見や必要な人員を確保しながら、社内の負担を抑えてシステム開発を進められます。
発注者が担うべき役割
システム開発を成功させるためには、開発会社にすべてを任せるのではなく、発注者側も主体的に関与することが重要です。システム開発は、発注者と開発会社が共同で進めるプロジェクトであり、発注者側の準備や意思決定が成果を大きく左右します。
まず重要なのは、システム導入の目的や実現したい内容を整理することです。業務効率化なのか、顧客サービス向上なのか、新規事業の立ち上げなのかによって、必要なシステムは変わります。目的が曖昧なまま開発を進めると、完成後に「思っていたものと違う」という事態が起こりやすいでしょう。
また、社内の意見を取りまとめる責任者を決めることや、仕様確認・承認を迅速に行える体制を整えることも欠かせません。システム開発ではさまざまな確認や調整が発生するため、開発会社と適切に連携できる環境を整えておくことが重要です。
システム開発の契約形態の違い
システム開発を発注する際には、契約形態の違いを理解しておく必要があります。代表的な契約形態として「請負契約」と「準委任契約」があります。どちらを選ぶかによって、責任範囲や進め方が大きく変わるため、自社の目的に合わせて選択することが重要です。
請負契約は、開発会社が成果物の完成を約束する契約です。発注者は、完成したシステムに対して対価を支払います。そのため、開発範囲や要件が明確なプロジェクトに適しています。一方で、途中で大きな仕様変更が発生すると、追加費用や納期の延長につながる場合があります。
一般的な準委任契約では、成果物の完成そのものではなく、業務遂行に対して報酬を支払います。ただし、契約内容によって成果に対する報酬を定める場合もあるため、報酬条件を明確にしておくことが重要です。要件が固まっていないプロジェクトや、開発を進めながら仕様を調整したいケースに向いています。柔軟な対応が可能な反面、作業量によって費用が変動しやすい特徴があります。
重要なのは、自社が何を重視するかを明確にすることです。成果物を確実に納品してほしい場合は請負契約、専門人材による継続的な支援や柔軟な開発を求める場合は準委任契約が適しています。契約形態の選択はプロジェクト成功の土台となるため、契約前に十分な検討を行いましょう。
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システム開発を発注する流れ
ここでは、システム開発を発注する大まかな流れについて解説します。
STEP1:社内課題と開発目的を整理する
システム開発を成功させるためには、最初に社内課題と開発目的を明確にすることが重要です。開発会社へ相談する前に、自社が何を解決したいのかを整理しておくことで、適切な提案や見積もりを受けやすくなります。
まずは、現行業務や既存システムの課題を洗い出します。たとえば、手作業による入力業務が多く時間がかかっている、情報が複数のシステムに分散している、顧客対応の品質にばらつきがあるなど、日常業務で発生している問題を整理します。
次に、必要な機能や利用者、業務フローを整理します。どの部署が利用するのか、どのような情報を扱うのか、どの業務を効率化したいのかを明確にすることで、開発会社との認識共有がスムーズになります。
また、予算や希望納期、機能の優先順位を事前に決めておくことも重要です。すべての要望を一度に実現しようとすると、費用や期間が大きく膨らむことが多いため、重要な機能から段階的に導入する考え方も有効です。
STEP2:提案依頼書(RFP)を作成する
社内で課題や目的を整理したら、次は提案依頼書(RFP:Request for Proposal)を作成します。RFPとは、開発会社に対してシステム開発の要望や条件を伝えるための文書です。
RFPには、システム導入の背景や目的、現状の課題、必要な機能、利用部門、希望スケジュール、予算などを記載します。これらの情報が整理されているほど、開発会社は具体的な提案を行いやすくなります。
最初から詳細な要件をまとめることがむずかしい場合は、課題や実現したい内容を整理した相談ベースの資料でも問題ありません。開発会社と対話しながら、要件を具体化していく方法も一般的です。
提案依頼書(RFP:Request for Proposal)についてはこちらもご覧ください。
>>RFPとは?意味やRFQ・RFIとの違い、構成要素、書き方について解説のページへ
STEP3:開発会社の候補を調査する
RFPの準備ができたら、システム開発を依頼する候補企業を選定します。選定時には、複数の開発会社へ問い合わせを行い、比較検討できる環境を整えましょう。
重要なのは、自社と近い業界や業務での開発実績があるかを確認することです。たとえば、製造業向けのシステムであれば製造業の実績が豊富な企業、ECサイト構築であればEC分野の経験が豊富な企業のほうが、業務理解や提案の質に期待できます。
さらに、得意領域や開発体制、対応範囲も確認しましょう。要件定義から運用・保守まで一貫対応できるのか、クラウドやAIなどの専門技術に対応できるのかなど、自社のニーズと合致しているかを見極めることが大切です。
STEP4:オリエンテーション・ヒアリングを実施する
候補企業が決まったら、オリエンテーションやヒアリングを実施します。この工程では、RFPや課題内容をもとに開発会社へ詳細な説明を行い、双方の認識を合わせていきます。
発注者は、業務内容や現場の課題をできるだけ具体的に共有することが重要です。実際の業務フローや運用上の問題点を説明することで、開発会社はより実態に即した提案ができるようになります。
また、開発会社からの質問に答えることで認識のズレを減らし、要件を明確にしていきます。質問内容が的確かどうかは、開発会社の理解力や経験を見極める判断材料にもなります。
その際に、担当者とのコミュニケーションのしやすさも確認しましょう。システム開発は長期的に続くこともあるため、円滑な意思疎通ができる相手かどうかは重要なポイントです。
STEP5:提案内容・見積もりを比較する
ヒアリング終了後、各社から提案書や見積書が提出されます。この段階では費用だけでなく、提案内容全体を比較することが重要です。
見積書については、開発範囲に含まれる項目と含まれない項目を詳細に確認します。後から追加費用が発生しないよう、どこまでが契約範囲なのかを明確にしておくことが重要です。
また、極端に安い見積もりには注意が必要です。開発工数が十分に確保されていなかったり、後から追加費用が発生したりする可能性があります。開発費だけでなく、運用・保守費用を含めた総コストで比較する視点が求められます。
STEP6:発注先を決定し、契約を締結する
提案内容や見積もりを比較した結果、もっとも適切な開発会社を選定したら契約締結へ進みます。契約段階では、後日のトラブルを防ぐために、細かな条件まで確認することが重要です。
まず、開発範囲や費用、納期、責任範囲を明確にします。契約書だけでなく、仕様書や見積書の内容も含めて整合性を確認しましょう。記載内容に曖昧な点がある場合は、契約前に必ず確認しておく必要があります。
また、著作権の帰属や再委託の可否、仕様変更時の対応方法、検収条件なども重要な確認事項です。特にシステムの知的財産権や運用後の利用条件は、長期的な事業運営にも影響します。
トラブル発生時の対応方法や支払い条件についても、事前に合意しておくことが重要です。
発注前に知っておきたいシステム開発工程の流れ
システム開発を発注する際は、開発会社がどのような工程でプロジェクトを進めるのかを理解しておくことが重要です。開発工程を把握しておくことで、発注者としてどのタイミングで確認や意思決定が必要になるのかがわかり、トラブルの防止にもつながります。
ここでは、一般的なシステム開発の流れを紹介します。
STEP1:要件定義
要件定義は、システム開発においてもっとも重要な工程のひとつです。この段階では、システムで実現したい機能や業務要件を具体的に整理し、発注者と開発会社が完成イメージを共有します。
たとえば、どのような業務を効率化したいのか、誰が利用するのか、どのようなデータを管理するのかなどを詳細に決めていきます。ここで決定した内容が後続工程の基準となるため、認識のズレがないよう十分に話し合うことが重要です。
要件定義の精度は、開発費用や納期、最終的な品質に大きな影響を与えます。要件が曖昧なまま進めると、後工程で仕様変更が頻発し、コスト増加や納期遅延につながる可能性があります。経営層も、重要な判断事項には積極的に関与することが求められます。
要件定義についてはこちらもご覧ください。
>>要件定義とは?作成手順や前後の流れをわかりやすく解説!のページへ
STEP2:基本設計・詳細設計
要件定義で決定した内容をもとに、システムの設計を行います。設計工程は、一般的に「基本設計」と「詳細設計」にわかれます。
基本設計では、利用者から見える部分を中心に設計します。画面レイアウトや操作方法、業務フロー、帳票の内容など、実際の利用イメージを具体化していきます。一方、詳細設計では、システム内部の処理やデータ構造、プログラム仕様などを開発者向けに具体化します。
発注者は、画面や操作性を中心に確認することになります。
STEP3:プログラミング・開発
設計内容が確定すると、実際のシステム構築作業に入ります。開発会社は設計書に基づいてプログラムを作成し、必要な機能を実装していきます。
この工程は開発会社が主体となって進めますが、発注者側も定期的な進捗確認を行うことが重要です。プロジェクトが計画どおり進んでいるか、課題やリスクが発生していないかを把握することで、大きな問題を未然に防げます。
また、開発途中で仕様変更が発生する場合は、影響範囲を確認したうえで判断する必要があります。小さな認識違いを早期に修正することが、プロジェクト成功につながるでしょう。
STEP4:テスト
システム開発では、品質を確保するために複数段階のテストが実施されます。テスト工程は、完成したシステムが期待どおりに動作するかを確認する重要なプロセスです。
主なテスト工程は、以下のとおりです。
・単体テスト:各機能が個別に正しく動作するかを確認する
・結合テスト:複数の機能を組み合わせた際の動作を確認する
・総合テスト・システムテスト:システム全体が要件どおりに動作するかを確認する
・受け入れテスト:発注者側が納品前に行う最終確認
STEP5:納品・リリース
テストが完了し、受け入れ確認が終了すると、システムの納品・リリースが行われます。完成したシステムを本番環境へ移行し、実際の業務で利用できる状態にします。
この際には、データ移行や初期設定なども実施されます。また、運用担当者向けのマニュアルや管理資料を受け取り、利用方法を理解しておくことが重要です。
さらに、システム稼働直後は予期せぬトラブルが発生することもあるため、開発会社のサポート体制や緊急時の連絡方法を事前に確認しておきましょう。
STEP6:運用・保守
システムを安定的に利用するためには、継続的な運用・保守が必要です。
運用・保守では、不具合修正や問い合わせ対応のほか、サーバー監視、セキュリティ対策、法改正への対応、機能追加などを行います。特に近年は、サイバー攻撃のリスクが高まっているため、継続的なセキュリティ対策が欠かせません。
また、保守契約の範囲や費用を事前に確認し、無償対応の範囲と追加費用が発生する範囲を明確にしておくことで、運用開始後のトラブルを防げます。さらに、将来的な機能拡張や業務改善も見据えながら、長期的な視点でシステムを活用していくことが求められます。
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システム開発の発注先を選ぶポイント
システム開発を成功させるためには、自社に合った開発会社を選ぶことが重要です。
ここでは、開発会社を選定する際に確認したいポイントを解説します。
自社の業界・業務に近い開発実績があるか
開発会社を選ぶ際にまず確認したいのが、自社と近い業界や業務における開発実績です。システム開発では技術力だけでなく、業務への理解も重要になります。
たとえば、製造業向けの生産管理システムと、小売業向けの販売管理システムでは、必要な知識や業務フローが大きく異なります。同じシステム開発でも、業界特有の課題や運用方法を理解している会社のほうが、適切な提案を行いやすくなります。
また、過去の導入事例やポートフォリオを確認することも重要です。どのような企業へ導入した実績があるのか、どの程度の規模のプロジェクトを担当しているのかを確認することで、自社との相性を判断しやすいでしょう。
提案内容が具体的でわかりやすいか
提案書の内容も重要な判断材料です。優れた開発会社は、単にシステムを開発するだけでなく、企業が抱える課題に対する解決策を具体的に示してくれます。
提案内容を確認する際は、自社の課題を正しく理解しているかを確認しましょう。たとえば「業務効率化」という要望に対して、どの業務をどのように改善するのかが具体的に説明されている提案は信頼性が高いといえます。
また、専門用語ばかりではなく、発注者にも理解しやすい説明がされているかも重要です。経営層や現場担当者が内容を理解できなければ、認識のズレが発生しやすくなります。技術的な内容をわかりやすく説明できる会社は、コミュニケーション面でも安心感があります。
さらに、開発範囲やスケジュール、想定されるリスクなどが具体的に示されているかも確認しましょう。プロジェクトを現実的な視点で提案している会社ほど、開発経験が豊富である傾向があります。
コミュニケーション体制が整っているか
システム開発は、数か月から長い場合は数年にわたるプロジェクトです。そのため、技術力だけでなく、コミュニケーション体制も重要な選定基準となります。
まず確認したいのは、担当窓口が明確になっているかどうかです。問い合わせ先や責任者が不明確だと、問題発生時の対応が遅れる可能性があります。担当者が固定されていることで、継続的な情報共有もしやすくなります。
また、質問への回答速度や説明の丁寧さも重要です。見積もり段階や提案段階での対応は、契約後のコミュニケーション品質を判断する参考になります。疑問点に対して迅速かつわかりやすく回答してくれる会社は、プロジェクト進行中も安心して相談できます。
さらに、進捗共有や課題管理の方法が明確になっているかも確認しましょう。定例会議の実施頻度や報告方法が整備されている会社は、トラブル発生時にも迅速な対応が期待できます。
見積もりと契約条件が明確か
見積書や契約書の内容が明確であることも、重要なポイントです。システム開発では、契約内容の曖昧さが後々の問題につながることがあります。
見積書では、どの作業が費用に含まれているのかを確認しましょう。要件定義や設計、テスト、導入支援などの範囲が明確になっているかが重要です。また、追加開発が発生した場合の費用算出方法についても、事前に確認しておく必要があります。
契約書については、納期や責任範囲、検収条件、著作権の帰属などが明確に記載されているかを確認します。契約内容を十分理解しないまま締結すると、後で想定外の問題が発生する可能性があります。
納品後のサポート体制があるか
システムは、導入して終わりではありません。長期間安定して利用するためには、納品後のサポート体制が充実していることが重要です。
運用開始後には、不具合対応や問い合わせ対応、セキュリティアップデート、法制度変更への対応などが必要になる場合があります。また、将来的な機能追加やシステム拡張に対応できるかも重要なポイントです。
システム開発会社は単なる発注先ではなく、長期的に事業を支えるパートナーです。納品後の支援体制まで含めて評価することが、失敗しない発注先選びのポイントといえるでしょう。
まとめ
システム開発の発注は、単に開発会社へ依頼するだけではなく、課題整理から要件定義、発注先選定、契約、運用・保守までを含めた経営判断のひとつです。プロジェクトを成功させるためには、自社の目的を明確にし、開発会社と十分なコミュニケーションを取りながら進めることが重要です。
また、開発工程や契約形態を理解し、適切な発注先を選ぶことで、品質・費用・納期のバランスが取れたシステム開発を実現しやすくなります。発注者自身も、プロジェクトの重要なメンバーであるという意識をもって、積極的に関与することが成功への近道です。
変化の激しいビジネス環境において、システムは企業競争力を支える重要な基盤となっています。自社に最適なパートナーを選び、計画的にプロジェクトを進めることで、業務効率化やDX推進、新たな事業成長につなげていきましょう。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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