Introduction
業務効率化やDX推進が求められる中で「RPA」と「AIエージェント」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし「何が違うのか」「どちらを導入すべきなのか」がわかりにくいと感じる経営層も多いのではないでしょうか。
RPAは定型業務の自動化を得意とし、AIエージェントは情報理解や判断支援を得意とするなど、それぞれ役割が異なります。また、近年は両者を組み合わせた活用も進んでいます。
この記事では、RPAとAIエージェントの違いを整理し、それぞれのメリット・デメリット、向いている業務、導入時の考え方、連携による効果までをわかりやすく解説します。
目次
RPAとAIエージェントの違いとは?
RPAとAIエージェントは、どちらも業務効率化を目的とした技術ですが、役割や得意分野は大きく異なります。
一言で表現すると、RPAは「決められた作業を自動で実行する仕組み」、AIエージェントは「状況を理解しながら判断・支援を行う仕組み」です。
近年は、DX推進や人手不足への対応を背景に、多くの企業で業務自動化への関心が高まっています。その中で「RPAとAIエージェントは何が違うのか」「どちらを導入すべきなのか」と悩む経営層も多いでしょう。
まず理解しておきたいのは、両者は競合する技術ではなく、目的が異なるという点です。
RPAは、あらかじめ決められたルールに沿って、同じ操作を繰り返すことを得意としています。たとえば、請求書データの転記、勤怠データの集計、毎日のレポート作成などがあります。これらの業務は手順が明確で、判断を必要としません。RPAは、こうした定型作業を高速かつ正確に処理できます。
一方、AIエージェントは、情報を理解しながら柔軟に対応することを得意としています。たとえば、顧客からの問い合わせ内容を理解して回答する、社内文書を要約して必要情報を整理する、複数のデータを分析して提案を行うなど、人間の判断や文脈理解が必要な業務に強みがあります。
つまり、RPAは「手を動かす自動化」、AIエージェントは「考える支援」に近い存在といえます。
また、どちらを選ぶべきか検討する際は「業務に判断が必要かどうか」が大きな判断軸になります。
たとえば、以下のような業務内容の場合は、RPAが向いています。
・手順が毎回同じ
・入力ルールが固定されている
・人による判断が基本的に不要
・処理件数が多い
逆に、以下のような業務はAIエージェントが向いています。
・問い合わせ内容が毎回異なる
・情報整理や要約が必要
・判断基準が曖昧
・人の思考補助が必要
このように、RPAとAIエージェントが向いている業務は異なるため、両者は補完関係にあるともいえます。今後の企業DXでは「RPAかAIエージェントか」の二択ではなく「どの業務にどちらを使うか」を整理する視点が重要になるでしょう。
RPA、AIエージェント、DXについてはこちらもご覧ください。
>>RPAを活用してできることは?事例や進めるうえでのポイントを解説のページへ
>>AIエージェントとは?仕組みや種類、活用事例などをわかりやすく解説のページへ
>>DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?なぜ必要なのか、進め方もあわせて解説のページへ
RPAとは
RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略称です。人がパソコン上で行っている定型的な業務を、ソフトウェアロボットによって自動化する技術を指します。
たとえば、以下のような作業はRPAが得意とする代表例です。
・Excelデータの集計
・請求書情報の転記
・基幹システムへの入力
・定型文のメール送信
・勤怠データの確認
・複数システム間のデータ移行
これらは多くの企業で日常的に発生している業務ですが、作業内容が決まっており、同じ処理を繰り返すという特徴があります。
RPAは、人がマウス操作やキーボード入力で実施している手順を記録し、その通りに処理を実行します。つまり「決められたルール通りに作業するデジタル作業員」のような存在です。
ただし、RPAはあくまで定型作業の自動化に強みをもつ技術であり、判断を伴う業務まで完全に代替するものではありません。しかし、定型業務の削減効果は高く、多くの企業で業務効率化や生産性向上に貢献しています。
特に以下のような作業では、高い費用対効果を期待できます。
・毎日発生する大量処理
・ミスが許されない入力作業
・人件費がかかっている単純作業
そのため、現在でもRPAは、企業の業務自動化における重要な選択肢のひとつとなっています。
RPAのメリット
RPAのメリットについて解説します。
・単純作業を自動化できる
これまで人手で行っていた繰り返し業務をロボットが代行することで、従業員はより付加価値の高い業務へ集中しやすくなります。
・人為的ミスを抑制できる
人間が長時間同じ作業を続けると、入力ミスや確認漏れが発生しやすくなります。しかし、RPAは定義されたルール通りに処理を行うため、作業品質を安定させやすくなります。
・業務の標準化につながる
RPA導入時には業務フローを整理し、ルール化する必要があります。その結果、属人的な運用の見直し、手順の統一、ブラックボックス化の解消などにつながるでしょう。
・導入イメージが明確なため導入しやすい
RPAは「現在、人が行っている作業を置き換える」という考え方のため、経営層や現場担当者も効果をイメージしやすい傾向があります。たとえば「毎日3時間かかっている入力作業を自動化する」という形で、削減工数を比較的明確に算出できます。そのため、ROI(投資利益率)を説明しやすいことも、企業で導入が進んだ理由のひとつです。
RPAのデメリット
RPAには多くのメリットがある一方で、注意すべき課題もあります。
・例外処理や曖昧な判断に弱い
RPAは、事前に定義したシナリオに沿って動作するため、想定外のケースに柔軟に対応することが苦手です。たとえば、入力形式が変わる、想定外のエラーメッセージが出る、判断基準が曖昧な場面などでは、処理が停止することがあります。
・UI変更や業務フロー変更の影響を受けやすい
RPAは画面操作を前提とするケースが多いため、システム画面のレイアウト変更やボタン位置変更が発生すると、正常に動作しなくなる場合があります。そのため、定期的なメンテナンスが必要になります。
・野良ロボ化のリスクがある
野良ロボ化とは、現場部門ごとに個別最適でRPAを導入した結果、全社的に管理されていないロボットが増えてしまう状態です。この状態になると、どの業務で使われているかわからない、管理責任者が不明、メンテナンスできない、セキュリティリスクが高まるといった問題が発生します。
・RPA開発が属人化しやすい
特定担当者だけがロボットの仕様を理解している場合、その担当者が異動・退職すると運用継続がむずかしくなるケースがあります。
・複雑な業務の全体最適には限界がある
たとえば、複数部門を横断する判断業務、顧客ごとに対応が異なる業務、文脈理解が必要な業務などは、RPA単体では対応がむずかしい場合があります。そのため、RPA導入では「何を自動化するべきか」を適切に見極めることが重要です。
▽あわせて読みたい▽
>>UIテストとは?メリットやテスト項目、手順について解説。自動化はするべきか?のページへ
AIエージェントとは
AIエージェントとは、AIを活用して状況を理解し、自律的に判断や支援を行う仕組みのことです。
従来のシステムは、事前に決められたルールに沿って動作するものが中心でした。一方、AIエージェントは、入力された情報や周辺状況を理解しながら、適切な対応を選択・提案できる点が特徴です。
近年は生成AIの進化によって、AIエージェントへの注目が急速に高まっています。
たとえば、以下のような業務で活用が進んでいます。
・問い合わせ内容を理解して回答する
・必要情報を収集して要約する
・社内文書を検索して回答する
・会議内容からタスクを整理する
・データ分析結果をもとに提案を行う
従来のRPAが「決められた手順を実行する仕組み」だとすると、AIエージェントは「情報を理解しながら行動する仕組み」に近い存在です。一方で、AIエージェントと生成AIは混同されやすいため、違いを整理しておく必要があります。
生成AIは、文章生成や画像生成など「コンテンツを生成するAI」を指すことが一般的です。たとえば、ChatGPT、Gemini、Claudeなどは代表的な生成AIです。
これに対してAIエージェントは、生成AIを含む複数技術を活用しながら「目的達成のために行動する仕組み」を指します。
つまり、以下のような違いがあります。
・生成AI=文章や画像などのコンテンツを作るAI
・AIエージェント=目的に応じて判断・支援し、必要に応じて実行まで行うAI
AIエージェントは多くのことを実現できますが、万能ではありません。出力内容の品質管理や業務ルール設計、権限制御など運用面で考慮すべき点も多くあります。そのため「AIを導入すればすべて自動化できる」という考え方ではなく「どの業務に適用すべきか」を整理したうえで活用することが重要です。
生成AIについてはこちらもご覧ください。
>>生成AIとは?ChatGPTだけじゃない生成AI活用法や注意点などを解説のページへ
>>近年活用されている生成AIとは?種類や業務での活用シーンなどを解説のページへ
AIエージェントのメリット
AIエージェントのメリットについて解説します。
・文脈理解を前提に柔軟に対応しやすい
従来のシステムやRPAでは、事前に決められたルール外の処理は苦手でした。しかしAIエージェントは、入力内容や状況を理解しながら回答や処理を変えられるため、人による判断が必要な業務にも対応可能です。たとえば、顧客問い合わせ対応では、質問内容が毎回異なります。RPAでは対応がむずかしいケースでも、AIエージェントであれば内容を理解し、適切な回答候補を提示できます。
・定型化しきれない業務にも適用しやすい
AIエージェントは文脈や内容を理解して判断できるため、定型化しきれない業務にも適用が可能です。従来のRPAでは対応がむずかしかった非定型業務も、ある程度自動化できるのは大きなメリットといえます。
・人の判断を補助できる
たとえば営業分野では、顧客情報分析、商談履歴整理、次回提案内容の提示、リスク予測などを支援できます。経営層向けの活用としては、会議資料の要約、市場動向分析、レポート生成、KPI分析などで活用されはじめています。このように、人の判断も補助できるため、活用の場が広がっています。
・業務全体の生産性向上につながる
単純作業だけでなく、情報収集、分析、判断補助、コミュニケーションまで支援できるため、従業員の意思決定の迅速化にも貢献します。AIエージェントは、こうした「考える前の準備作業」を削減できる可能性があります。その結果、企業全体の業務スピード向上や、付加価値業務への集中につながるでしょう。
AIエージェントのデメリット
AIエージェントには多くの可能性がある一方で、導入時には注意すべき課題もあります。
・出力内容にばらつきや誤回答が生じる可能性がある
AIエージェントは確率的に回答を生成する仕組みをもつため、毎回完全に同じ結果になるとは限りません。また、誤回答や不正確な情報を出力するリスクもあります。いわゆる「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。たとえば、存在しない情報を生成する、事実と異なる内容を回答する、文脈を誤解するといったケースがあります。そのため、重要業務では人による確認プロセスが必要になります。
・ガバナンスや権限設計が必要
AIエージェントは大量の情報へアクセスするケースがあるため、機密情報管理、アクセス権限、データもち出し防止、ログ管理などを適切に設計する必要があります。特にインターネット経由で社外のAIサービスを利用する場合、入力情報が外部に送信されることへの懸念があるため、情報漏えいリスクの精査は不可欠です。
・業務要件定義が甘いと成果が不安定になりやすい
AIエージェントは「何を目的に、どこまで判断させるのか」を整理しなければ、期待した成果につながりにくくなります。たとえば、回答品質基準、判断範囲、エスカレーション条件、利用対象データなどを明確化する必要があります。
・導入後も継続的な監視・改善が前提になる
RPAと同様に、AIエージェントも導入後の継続的な改善を行わなければなりません。実際の利用状況を確認しながら、プロンプト改善、ワークフロー調整、回答精度向上、ナレッジ更新などを継続的に実施する必要があります。そのため、AIエージェント導入では、単なるツール導入ではなく「継続的に改善運用する体制づくり」が重要になります。
RPAとAIエージェントの違い
RPAとAIエージェントは、どちらも業務効率化を目的とした技術ですが、考え方や役割は大きく異なります。特に経営層にとって重要なのは、両者の違いを理解したうえで、自社業務に適した活用方法を選ぶことです。
ここでは、RPAとAIエージェントの主な違いを整理します。
| 項目 | RPA | AIエージェント |
| 基本役割 |
定型作業の自動化 |
判断・支援・情報処理 |
| 判断能力 |
基本的にもたない |
文脈理解をもとに判断可能 |
| 得意業務 |
繰り返し作業 |
非定型・半定型業務 |
| 対応範囲 |
ルール化された業務 |
曖昧さを含む業務 |
| システム操作 |
画面操作に強い |
API連携や自然言語処理に強い |
| 導入難易度 |
比較的低い |
設計・評価が重要 |
| 運用保守 |
シナリオ修正中心 |
品質改善・監視が必要 |
| 効果測定 |
工数削減が中心 |
生産性や品質向上も対象 |
判断の有無
RPAとAIエージェントの最も本質的な違いは、判断できるかどうかです。
RPAは、事前に設定されたルール通りに処理を実行します。たとえば、以下のような処理を決められた順番で、正確に実行します。
・指定フォルダのファイルを開く
・Excelデータをコピーする
・指定項目へ入力する
・完了後にメール送信する
RPA自身が状況を考えて判断することは、基本的にできません。
一方、AIエージェントは、入力内容や文脈を理解しながら処理内容を変えられます。
たとえば、問い合わせ対応では、以下の内容を判断しながら対応できます。
・緊急度が高い内容か
・クレームか質問か
・どの部署へ振りわけるべきか
つまり、RPAとAIエージェントには、以下のような違いがあります。
・RPA:決められた作業を実行する
・AIエージェント:状況に応じて判断する
近年、単純自動化だけでは解決できない課題に対して、AIエージェント活用が注目されています。
得意な業務範囲
RPAとAIエージェントでは、得意な業務範囲も大きく異なります。
RPAは、定型業務に強みがあります。
たとえば、以下のように毎回同じ流れで処理する業務に向いています。
・請求書処理
・経費精算入力
・売上データ集計
・勤怠管理
・在庫データ更新
これらは処理ルールが明確で、例外が少ないため、RPAによる自動化効果が高くなります。
一方、AIエージェントは、非定型・半定型業務に対応しやすい点が特徴です。
たとえば、以下のように人の判断や文脈理解を必要とする業務に強みがあります。
・顧客問い合わせ対応
・社内FAQ対応
・レポート要約
・情報収集・分析
・営業提案支援
特にホワイトカラー業務では「情報を探す」「整理する」「判断する」といった作業負荷が大きいため、AIエージェント活用による効果が期待されています。
例外処理への強さ
例外処理への対応力も、両者の大きな違いです。
RPAは、想定外のケースに弱い傾向があります。
たとえば、以下のような場合、処理が停止するケースがあります。
・ファイル形式が違う
・画面表示が変わる
・想定外エラーが発生する
RPAは「決められたシナリオ」を前提としているため、ルール外の状況に柔軟に対応することが苦手です。
一方、AIエージェントは、例外処理や補助判断に対応しやすい場合があります。
たとえば、問い合わせ内容が多少曖昧でも、以下のような対応が可能です。
・内容を推測する
・関連情報を探す
・適切な候補を提示する
また、複数の情報を参照しながら判断できる点も特徴です。
ただし、AIエージェントが完全自律で万能というわけではありません。重要な判断や高リスク業務では、人による確認が必要になる場面もあるため、注意が必要です。
AIエージェントは「人を完全に置き換える」というより「人の判断を補助する存在」として考えることが現実的です。
システム連携・操作の向き不向き
RPAとAIエージェントでは、システムとの関わり方も異なります。
RPAは、既存システムの画面操作自動化に強みがあります。
たとえば、以下のように人間が行うPC操作を代替できます。
・Web画面操作
・Excel処理
・システム入力
・複数システム間転記
特に、古いシステムやAPIが存在しない環境でも導入しやすい点は大きなメリットです。
一方、AIエージェントは、API連携や情報処理との相性がよい点が特徴です。
たとえば、以下のような業務を柔軟に実施できます。
・CRMとの連携
・社内ナレッジ検索
・文書要約
・自然言語操作
・データ分析
つまり、RPAとAIエージェントには、以下のような違いがあります。
・RPA:定型操作の実行に強い
・AIエージェント:判断・情報整理に強い
導入のしやすさ
導入のしやすさも、両者で異なります。
RPAは、比較的着手しやすい技術です。特に、以下のような業務は効果が見えやすいため、短期間で成果を出しやすい傾向があります。
・単純業務
・定型入力
・繰り返し作業
一方、AIエージェントは、設計思想や評価指標が重要になります。たとえば、以下のような項目を導入前に整理する必要があります。
・どこまでAIに判断させるか
・回答品質をどう評価するか
・誤回答時にどう対応するか
また、PoC(概念実証)でも進め方が異なります。
RPAは「自動化できるか」が中心になりますが、AIエージェントでは、以下の観点も含めて検証する必要があります。
・精度
・実用性
・現場への定着度
・ガバナンス
そのため、AIエージェント導入では、小規模検証から段階的に進める企業が増えています。
PoC(概念実証)についてはこちらもご覧ください。
>>PoCとは?意味や検証内容、実施するメリット・デメリットを解説のページへ
運用・保守の考え方
導入後に必要となる運用・保守体制も異なります。
RPAでは、導入後にシナリオ修正やメンテナンスが必要になります。たとえば、以下のような保守業務を継続的に実施します。
・UI変更対応
・処理手順変更
・エラー修正
一方、AIエージェントでは、品質評価や継続改善に重点が置かれます。
たとえば、以下のような運用管理が必要です。
・回答精度確認
・権限制御
・プロンプト改善
・ナレッジ更新
・ワークフロー調整
つまり、RPAは「システム保守」に近く、AIエージェントは「継続的な評価・改善運用」に近い特徴があります。そのため、AIエージェント導入では、IT部門だけでなく、業務部門を含めた運用体制づくりが重要です。
費用対効果の出し方
費用対効果の考え方も異なります。
RPAは、作業削減時間をもとに効果測定しやすい点が特徴です。たとえば、以下のような指標を定量化しやすくなります。
・月間削減時間
・人件費削減
・処理件数増加
そのため、比較的ROIを説明しやすいでしょう。
一方、AIエージェントは、単純な工数削減だけでは測れないケースがあります。
たとえば、以下のような効果も重要な評価指標になります。
・対応品質向上
・顧客満足度向上
・意思決定の迅速化
・売上貢献
・ナレッジ活用促進
そのため、単純なライセンス費用比較だけでは、導入価値を正しく判断できない場合があります。
特にAIエージェントは「従業員の生産性向上」や「意思決定高度化」に価値があるため、中長期視点で評価することが重要になるでしょう。
RPAとAIエージェントの使い分け
RPAとAIエージェントは、どちらか一方を選べばよいというものではありません。重要なのは「どの業務にどちらを適用するべきか」を整理することです。
ここでは、両者が向いている業務について解説します。
RPAが向いている業務
RPAは、バックオフィスを中心とした定型業務に向いています。
特に以下のような業務では、高い効果を発揮します。
・作業手順が固定されている
・ルールが明確
・処理件数が多い
・毎日繰り返される
代表的な例としては、以下があります。
・経費精算処理
・請求書入力
・売上データ集計
・在庫更新
・勤怠データ処理
・定型レポート作成
・システム間データ転記
これらは、人が手作業で行うと時間がかかりやすく、入力ミスも発生しやすい業務です。
RPAによって自動化することで、作業時間削減やミス削減、業務品質安定化につながるでしょう。また、既存システムを大きく改修せずに導入しやすい点も大きなメリットです。
AIエージェントが向いている業務
AIエージェントは、非定型・半定型業務に向いています。
特に、以下のような業務で効果を発揮します。
・情報の整理が必要
・判断が必要
・問い合わせ内容が毎回異なる
・文脈理解が必要
代表例のひとつが、顧客対応や社内問い合わせ対応です。
たとえば、以下のような業務では、問い合わせ内容が毎回異なります。
・商品に関する質問
・契約内容確認
・社内制度問い合わせ
・ITヘルプデスク対応
従来型RPAだけでは対応がむずかしいケースでも、AIエージェントであれば自然言語を理解しながら柔軟に対応可能です。
また、情報収集や分析支援でも活用が進んでいます。
たとえば、以下のような業務で活用されています。
・市場調査
・競合分析
・会議要約
・提案資料作成支援
・KPI分析
AIエージェントは大量の情報を整理し、人にわかりやすく提示することを得意としています。そのため、ホワイトカラー業務の生産性向上につながりやすい特徴があります。
さらに最近では、営業支援分野でも活用が広がっています。
たとえば、以下のように人の判断を補助する形で利用されています。
・商談履歴整理
・次回提案内容の提案
・顧客分析
・メール文面作成
ただし、AIエージェントは万能ではありません。誤回答リスクや判断ミスの可能性もあるため、重要業務では人による確認体制が必要です。
そのため、AIエージェントは「人を完全に置き換える」のではなく「人の生産性を高める仕組み」として活用する考え方が重要になります。
RPAとAIエージェントの連携による効果
近年は「RPAかAIエージェントか」を選ぶのではなく、両者を連携させる考え方が注目されています。
なぜなら、RPAとAIエージェントは得意分野が異なるためです。
・RPAは「作業実行」に強い
・AIエージェントは「判断・情報整理」に強い
そのため、両者を組み合わせることで、より高度な業務自動化を実現しやすくなります。たとえば、従来のRPAだけではむずかしかった「非定型業務を含む業務フロー」も、自動化対象に含めやすくなります。
■連携の基本イメージ
両者の役割分担は、以下のとおりです。
1.AIエージェントが情報を理解・判断する
2.RPAが実際のシステム操作を行う
たとえば、問い合わせ対応業務では、以下のような流れで処理が行われます。
1.AIエージェントがメール内容を解析
2.問い合わせ種別や優先度を判定
3.必要情報を整理
4.RPAが基幹システムへ登録
5.定型返信メールを送信
このように、AIエージェントが判断・整理を担い、RPAが定型操作を実行するイメージです。
■組み合わせで効果が出やすい場面
特に効果が出やすいのは「半定型業務」です。
半定型業務とは、以下のような特徴をもつ業務です。
・一部はルール化できる
・ただし判断も必要
・情報形式が毎回少し異なる
該当する業務の例は、以下のとおりです。
・契約書確認
・問い合わせ対応
・営業支援
・発注処理
・レポート作成
従来は人が対応せざるを得なかった業務でも、AIエージェントとRPAを組み合わせることで、自動化範囲を広げられる可能性があります。
■連携によるメリット
メリットとしては、業務全体最適につながりやすい点があります。
従来のRPAは、個別業務単位の効率化が中心でした。
一方、AIエージェントを組み合わせることで、以下のようなプロセスまでを一連で支援しやすくなります。
・情報整理
・判断
・実行
・レポート化
その結果、以下のような効果につながります。
・業務スピード向上
・従業員負荷軽減
・顧客対応品質向上
・ナレッジ活用促進
・意思決定迅速化
さらに、人的リソース不足への対応手段としても期待されています。
特に近年は、以下のような課題を抱える企業が増えています。
・バックオフィス人材不足
・IT人材不足
・管理部門負荷増加
AIエージェントとRPAの組み合わせによって、限られた人員でも業務を回しやすくなる可能性があります。
■連携時の注意点
まず重要なのは「どこまでAIに任せるか」を明確にすることです。
AIエージェントは便利な反面、誤判断リスクも存在します。
そのため、以下のように適切な統制設計が必要です。
・最終承認は人が行う
・高リスク業務は自動化しない
・エスカレーション条件を定義する
また、ブラックボックス化にも注意が必要です。
AIエージェントは内部判断が見えにくくなる場合があるため、以下のような管理も重要になります。
・ログ管理
・判断履歴管理
・監査対応
・ガバナンス整備
さらに、導入後の継続改善も欠かせません。
AIエージェントは、一度作って終わりではなく、以下のような改善を継続的に実施する必要があります。
・回答品質改善
・ナレッジ更新
・業務フロー見直し
・プロンプト改善
つまり、AIエージェントとRPAの連携は、単なるツール導入ではなく「業務プロセス全体の再設計」に近い取り組みといえます。
そのため、経営層としては、以下を整理したうえで導入を進めることが重要です。
・どの業務を自動化するか
・どこに人を残すか
・どのように運用管理するか
まとめ
RPAとAIエージェントは、どちらも企業の業務効率化を支える重要な技術です。
しかし、両者は得意分野が大きく異なります。RPAは、決められたルールに沿った定型業務の自動化に強みがあります。一方、AIエージェントは、情報理解や判断支援を伴う非定型・半定型業務への対応に強みがあります。
そのため「どちらが優れているか」ではなく「どの業務に適しているか」を見極めることが重要です。
特に近年は、生成AIの進化によってAIエージェント活用が急速に広がっています。
ただし、AIエージェントは万能ではなく、以下のように注意すべき点も存在します。
・誤回答リスク
・ガバナンスの課題
・継続改善の必要性
そのため、導入時には適切な業務要件整理や運用設計が欠かせません。
今後は、RPAとAIエージェントを組み合わせた活用がさらに重要になると考えられます。AIエージェントが判断を行い、RPAがシステム操作を実行することで、より高度な業務自動化を実現できるでしょう。
RPAとAIエージェントの違いを正しく理解し、適切に使い分けることが、今後の業務改革や生産性向上の重要なポイントです。
RPAとAIを活用した業務改善なら、SHIFTのAI BPOサービスで一括支援
「業務を効率化したいが、ノウハウやリソースが足りない」「RPAやAIを活用して生産性を高めたい」などとお悩みの場合には、SHIFTにお任せください。
SHIFTのAI BPOサービスをご活用いただければ、AIを活用した業務改善から作業代替まで、企業価値向上を目指します。単純な作業代替にとどまらず、現状の業務可視化・課題の整理から、あるべき業務プロセスの設計、Fit&Gapを含む実現方法の検討・実装、現場適用・浸透までワンストップでサポートすることで、自社社員・有識者のコア業務集中や業務プロセス圧縮によるコスト削減を実現します。お気軽にご相談ください。
監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
――――――――――
ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
――――――――――